光の子
観念して送話口を覆う手を緩めた。
「いつから……?」
『あ、最初、から』
「……最低だな、オレ」
『違うよ。最低なんかじゃない。
学校、辞めたんだね。知也に聞いた。プロになったって』
「編入したんだ。私立の学校に」
『そう』
「親父のことも、聞いた?」
『……うん』
「自殺だったんだ」
『え?』
オレのせいだ、
そう吐き出してしまいそうな口を矢楚は抑えた。
泣いてしまう気がしたからだ。
『矢楚……。大丈夫?』
矢楚はうん、と言うことができなかった。ただ少しの沈黙が流れた。
広香に言うつもりのなかったことが、ぽろりぽろり、矢楚の口から零れだしてくる。
「プロになったとたんにね、シュートの仕方を忘れちゃったんだ。
どうして今まで入れることができたのか、分かんないぐらい……」
広香の声を聞けば思い出せる気がしたんだ。
それは、言わなかった。