光の子


その女子は、いつも友だちを一人連れて廊下にやってきた。

友達と会話をしながら、矢楚とクラスの様子を、ただ、見つめている。


矢楚が廊下を通っても、声をかけるわけでもない。

しかし、休み時間ごとに立つその子の視線が、クラスの女子たちに奇妙な緊張感を与えて、矢楚に近づきにくくした。


その女子の名前が、柴本亜希、ということ。

その子の姉が、矢楚の所属するクラブチームにたまに応援にやってくるチアリーダーだということが、

徐々に矢楚とクラスメイトの耳に入ってきた。


亜希は直接話すことなく、いかにして自分が矢楚を知り、いかに夢中であるかを、噂を使って伝えた。



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