光の子
「ふーん、まだ小ちゃいからこの子には見つかってないんだぁ」
そうね、と、ふんわりと産毛に被われた、桃のような娘の頬にくちづけた。
私と矢楚が、互いのうちに光を見つけたように。
この娘もまた、
美しく貴い何かを、その人生で見いだすことができますように。
広香は、娘を床に下ろし、皿を梱包しはじめた。
「どうして、ナイナイするの」
「日本に持っていくのよ。お父さんがお仕事から帰ったら、一緒に空港に行くの」
「飛行機?」
「そうよ、飛行機に乗って、お父さんとお母さんが生まれた国に行くの。
すっごく、遠いのよ」
梱包した皿を抱え、娘に手を差し出した。
「行きましょう、光子(みつこ)」
広香に向けて伸ばした光子の小さな手のひらが、
窓から注ぐ陽を受けて、淡く赤い光を宿した。
……………完………………