光の子
… … … … … …
気付けば木綿子のうちの店の前に着いていた。
店の入り口から中に入ると、
「ひろか!!」
柊太がすぐ気付き、誇らしげに手に持った大きなぺろぺろキャンディーを広香に見せた。
後ろで、木綿子の母が申し訳なさそうにしている。
「広香ちゃんごめんね〜。根負けしてあげちゃったのよ。夕飯前だから、おみやげよ、って言ったんだけどね。
おばさんも、すっかり勘が鈍ったね〜、つい、甘やかしちゃう」
店のお菓子に囲まれて、二歳児に我慢できるはずもない。
しかし、そのキャンディーを手に入れるために、柊太はさぞ大騒ぎしたことだろう。
「迷惑かけたでしょ、本当にありがとう」
「なんてことないわよ!もっと甘えていいのよ、広香ちゃん」
木綿子の母はそう言って朗らかに笑って見せたが、
表情には疲れがにじみ、店の中は散らかり、
子守に駆り出されていた木綿子の弟は、うんざりした顔をしている。
柊太は、恐ろしく手のかかる子なのだ。