光の子
抱きついてきた柊太を軽がると持ち上げて、柊太の父親はそのまま肩車した。
「まーた、ワガママしてただろー」
小柄な広香には、見上げるほど大きな体躯だ。
大らかに笑ったその人を見て、広香はほっとした。
「健人(けんと)さん」
「大騒ぎしてるガキがいるなーと思ったら、息子だったよ〜。
広香ちゃん、いつもありがと」
梶原健人は、柊太の父親であり、広香の母の恋人だ。
広香の母が通う心療内科で看護士をしている。
小六のはじめに、広香があれほど苦しんだ母の再婚は。
母がうつで入院して二ヶ月にも満たない、七月の終わりに。
義祖母が母の面会にやって来て、離婚届けを置いていった。
ただそれだけで、終わった。
あちらの家にしてみれば、家事をこなす主婦が欲しくてした再婚だったのだから。
心身共に病んだ母を見限ったのも、無理はない。
折しも夏休みに入っていた広香は、夏の間、広香の母方の親戚に預けられた。
夏の終わりに母が広香を迎えにきたときには、
母の隣にはもう、この梶原健人が寄り添っていた。