光の子
喫茶店に入るのは、初めてだった。
店の外壁に蔦(つた)がはい、店前に「自家焙煎」の看板が立てられている。
八時を過ぎたばかりだが、五坪ほどの店内に、三名の男性客がいた。
薄暗い店内は、時間の感覚を麻痺させる。淡いオレンジ色の照明が、レトロな店内を夕暮れ時のように見せた。
健人は、店の中でも一番陽の差す窓辺へ広香を座らせた。
「夜勤明けの足で来たからさ〜、がっつり食べたい気分だよ。広香ちゃんは何にする?」
「私、あんまりお腹すいてない」