光の子
オッケ、と言いながら、健人は広香にとアップルパイのアイス添えを注文した。
朝ならではの素早さで運ばれてきた、熱くてさくさくのパイ。上に載ったアイスがみるみる溶けていく。
少し酸っぱくフランベされたりんごと、甘いアイス。口の中に入れたとたん、頭の中がふんわりと軽くなる。
甘いものは、なぜに人を心地よくするのだろう。お腹がいっぱいのはずが、すいすいと口のなかに入っていく。
矢楚にも食べさせてあげたいな。
「そんなに、美味いの?」
「え?」
「うっとりした顔で、パイを眺めてるから」
矢楚のことを考えていたからに違いない。広香はとっさに、聞かれたこととは違うことを言ってしまった。
「朝食べるにしては、すごい贅沢だね。
お母さんと柊太に悪いな」
健人はモーニングのプレートに、ホットケーキまで並べて、次々と平らげながら、苦笑した。
「だめだよ、それを言っては。この一瞬は、罪悪感を追いやって味わうべきなんだ」