【長編】FOUR SEASONS
「俺さ、命を懸けても優華を護れるかって訊かれた事あるんだ」

吸い込まれるような澄んだ紫の瞳を思い出した時、いつの間にか勝手に口が動いていた。

何故麻里亜にそんな事を言ってしまったのか、自分でも解からなかった。

だけど…次の瞬間、俺の中で妙な感覚があった。

少し驚いた顔をしてから、フッと琥珀色の瞳を細くして微笑んだ麻里亜。
その微笑があの日同じように微笑んだ紫の瞳と重なる…。

不思議な感覚が俺を包んだ。

あの日感じた、心を癒し包み込む月の様な穏やかな雰囲気…

このふたりは…何だか凄く似ている気がする。

……まさか…?


「あの事件の日、セルデュ先生が俺にそう訊いたんだ。きっと先生には誰か命を懸けても護りたい女性(ひと)がいるんだろうなって…そう思ったよ」

麻里亜の瞳が僅かに揺らぐ…。


夏祭りの夜に見た光景が脳裏を過ぎる。


…疑惑は確信に変わった。


麻里亜の微笑みに

その瞳に

俺は自分が答えを見つけた事を悟った。

麻里亜の瞳の変化を確かめながら試すように問う。


「麻里亜……おまえセルデュ先生と付き合ってるんだろ?」


麻里亜は何も言わなかった。


それが…答えだった。



++ 麻里亜の恋人 Fin++


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