【長編】FOUR SEASONS
階段を駆け上がる音が近くなり、反射的にちらりと視線を送って驚いた。

泣きそうな顔で、何かを探すように駆け上がってくる少女


――― 優華?



「孝宏先輩……よかった…」

優華が俺を探していた事実が信じられなくて、一瞬眉を潜める。

「何? 俺を探していたのか?」

動揺を悟られたくなくてワザとぶっきらぼうに言葉を投げる。

本当はそんな風に冷たく声をかけるつもりなんて無かったのに…
まだ信じられないと言われた事が胸に痛くてまともに話せそうに無かった。

「あの…先輩、あたし……」

優華が言いにくそうに何かを告げようと唇を動かしたが、否定の言葉を聞くのが怖くてその場から立ち去ろうと、座り込んだままの身体を起こす。


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