【長編】FOUR SEASONS
階段を3段飛びに駆け下り大またで駆け寄ると優華を抱きとめた。

優華は俺の腕の中に崩れるようにして倒れこんだ。

先ほどまでの冷たく研ぎ澄まされた感覚は一瞬にして消えた。

胸に湧き上がったのは激情という言葉が相応しい、愛しさと怒りだった。

優華の茶色い肩より20cmほど長かった髪はバサバサに切られて、頬はひどく殴られたのが分かるほどに腫れあがっていた。

殴られたときに切ったらしい唇からは血が滲んでいる。

制服のブラウスの胸はボタンが飛び肌蹴ている。一瞬ブラウスの合間から見えた白い肌に何か嫌なものが見えた。

「イヤッ…。ダメ先輩。見ない…でっ…。」

抵抗する優華の腕を抑え、胸元の傷を見る。

白く浮き上がる細い首、その鎖骨の下辺りに直径1cm弱の火傷。

「ひどい…タバコを押付けられたのか?」

優華は何も言わずにただ、黙って俯いて泣いていた。

「優華・・・ごめん。俺のせいで辛い思いをさせた。ごめんな?俺・・・お前を護るから。絶対に護るから。
もう、こんな思いはさせないよ。ごめんな本当に。俺がお前を好きになったばっかりに…。」

優華がゆっくりと俺を見上げた。

その瞳には俺が映っているが、何も見ていなかった。

俺の言った言葉を理解するだけの気力も残っていないようだ。


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