【長編】FOUR SEASONS
顔も…

手も…

髪も…

茶色く変色した血がこびりつき、制服もどす黒く染まっている。

こんな姿で街を歩いたら、すぐに警察が飛んでくるだろう。

とりあえず、手と顔の血を落とす為に水道を捻る。

流れ出る水は冷たく身を切るようだったけれど、孝宏の冷え切っていく身体の冷たさを思うとそれすら気にならなかった。

水に馴染んだ血が赤黒い筋となって排水溝へと流れていくのをぼんやりと見つめる。

体中の血が流れ出しているのではないかと思うほどに孝宏の身体を染め上げた血液の赤。

その赤の中に崩れ落ちた孝宏の姿を思い浮かべて涙が溢れてくる。


神様お願いです。


あたしの命を差し上げますから…


どうかあの人だけは連れていかないで下さい。


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