【長編】FOUR SEASONS
一瞬あの日の桜吹雪の情景が瞼の奥に広がる。

声をかけた俺に大きく瞳を見開いた優華。

舞い踊る桜の花びらの中に消えていった優華。

あの日必ず手に入れると誓った。

そして今、こうして彼女は俺の腕の中にいる。

抱きとめてくれる細い腕も、涙を堪えて投げかける微笑みも何もかもが愛しい。

意識が桜色に染め上げられる。

俺はおまえを護る事が出来たんだな



おまえが無事なら…それでいい



舞い上がり優華の姿をかき消す桜吹雪

頼むから、後少しだけ優華の姿を見せてくれ

俺の前から消し去らないでくれ

優華の呼ぶ声がどんどん遠くなり―…

桜の色は闇に染まっていった。



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