【長編】FOUR SEASONS
消えかける記憶の中から細い糸を手繰るように、不安定で断片的な記憶を手探りで引き寄せる。


ぼんやりと思い起こすのは顔を思い出せない小さな女の子

俺に向かって笑いかけてくる眩しいばかりの笑顔のイメージ。

彼女の顔が思い出せない…。

彼女の…名前は…。

『たかちゃん、だあいすき』

鈴を鳴らすような声が響き渡り心がふわっと温かくなる。

誰かに抱きしめられたような穏やかな気持ちになり

凍りついた指先から少しずつ熱を取り戻すように温かくなるのを感じた。

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