【長編】FOUR SEASONS
くやしい
どうしてあたしこんな目に遭わなくちゃいけなかったんだろう?
回らない頭でぼんやりと考えながら、力の入らない足でフラフラと歩いていると、北棟のほうから誰かがあたしの名を呼びながら走ってくるのが見えた。
「優華っ!」
声が聞こえたと同時に誰かがあたしに手を伸ばした。
優しい声に張り詰めていたものが一気に流れ出す。
安堵した事で力が抜けたのか、差し出された腕の中に崩れるように倒れ込んだ。
心配そうに覗き込む男性(ひと)。
澄んだ綺麗な瞳には見覚えがある。
沖崎先輩…
殴られたときに切ったらしい唇からは血の味がする。
声を出そうとしても、唇すら上手く動かせないことにようやく気がついた。
その時…
沖崎先輩の視線があたしのはだけたブラウスの一点に釘付けになった。
突然忘れていた忌まわしい記憶がフラッシュバックして身体が震えた。