【長編】FOUR SEASONS

「イヤッ…。ダメ先輩。見ない…でっ…。」

本能的に隠そうとしたけれどもう遅かった。

沖崎先輩は顔色を変え、必死で隠そうと抵抗するあたしの腕を抑えると、胸元の傷を見て聞いた。

「ひどい・・・タバコを押付けられたのか?」

何も言えなかった。

何があったのか。

何を言われたか。

ボンヤリとして曖昧だった記憶が、怒りと恐怖と言う形になって胸に蘇ってきた。

突然ガタガタと、震え出す身体を止める事が出来ない。

沖崎先輩はあたしを抱き締めるように支えてくれていた。

沖崎先輩は悪くない。

むしろ心配してくれているのに、これ以上何があったか知られたくは無かった。

事実を知ったら沖崎先輩はきっと自分を責めて苦しむだろうから…。

返事をせず黙って俯くと、耐えていた涙がハラハラと関を切ったように流れ始めた。

「優華…ごめん。俺のせいで辛い思いをさせた。ごめんな?」

ゆっくりと顔を上げると、沖崎先輩はとても苦しそうにあたしを見ていた。

先輩の優しい瞳が何かを語っていたけれど

再び遠のき始めているあたしの意識では、彼の言葉はどこか遠くに聞こえて

何を言われているのか、内容はまったく理解できなかった。


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