【長編】FOUR SEASONS
沖崎先輩はあたしを横抱きにして、保健室へと歩き出した。

驚いて降りようとしたけれど、身体中が痛くて思うようには力が入らない。

誰かにこんな所を見られたら、明日もう一度呼び出されるかもしれない。

さきほどのことが頭をよぎり、その瞬間、耐えがたいほどの怒りと恐怖が込み上げてきた。

今日は耐えた。

でも明日同じことがあったら耐えられる自信は無い。

『俺…お前を護るから。絶対に護るから』

沖崎先輩の声が胸に蘇ってきて、高ぶっていた気持ちがすうっと凪いでいく。

抵抗する気力も失せ、諦めたように力を抜くと沖崎先輩の胸に身体を預けた。

あの言葉が夢であっても、幻想であっても、今はその言葉に心を預けたかった。

気のせいだったのか一瞬強く先輩に抱きしめられた気がした。

その腕の力があたしに勇気と安堵をくれたのか、身体からゆっくりと力が抜け落ちて、再び意識が白くなっていくのを感じていた。

沖崎先輩の腕の中は優しくて心地よくて、とても・・・安心できた。


『俺…お前を護るから。絶対に護るから。
もう、こんな思いはさせないよ。
ごめんな本当に。
俺がお前を好きになったばっかりに…』


意識が再び途切れる刹那、さっきの先輩の言葉を思い出した。

あれはきっと夢だったに違いない。

それでもいい。

いまだけは、その言葉を信じていたいから・・・。


先輩の腕の中はやさしい香りがした。



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