【長編】FOUR SEASONS
複雑な気持ちを知ってか知らずか、グラスと飲物を用意するあたしを、孝宏はクスクス笑いながら背中から抱きしめてきた。

「きゃ…危ないよ。」

「離れないし。」

「それってこういう意味じゃないでしょう?」

「フフッ…まあね。でも、こういう意味もあるだろう?」

「そういうのって屁理屈なんじゃない?」

「まあね、ところでさ、優華忘れている事ない?」

「なに?」

「お帰りなさいのキス。」

そう言ってあたしを振り返らせるとそっと唇を重ねてくる。

柔らかい唇が何度も啄むように触れてあたしを酔わせていく。

「ん…ダメ。飲物持っていかなくちゃ。」

離れようとするあたしをギュッと抱きしめると唇を耳に寄せ噛むようにして囁いた。

「もう一つ忘れてる……ペナルティ…。」

「は…?」

一瞬何を言われているのかわからなかった。


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