【長編】FOUR SEASONS
彼女の口から俺の名前が出た事に心臓が一瞬で反応し、全力疾走を始める。

顔は赤くないか?

震えていないか?

心臓の音聞こえてるんじゃねえか?

「俺のこと…知ってる?」

「はい」

マジうれしい。

天にも昇るってこういう気持ちか?

だが彼女の次の言葉が、俺を奈落の底に落し入れた

「すごくもてるんですよね?一ヶ月以上彼女と付き合ったことの無いプレイボーイって聞いてますよ。本当なんですか?」


――世の中が暗転した――


「でも納得。本当に素敵ですもんね」

そう言って笑う彼女に少し救われる。

「あの…ごめんなさい。あたし友達が待ってますので、失礼します。」

ぺこりと頭を下げると、固まって動けないでいる俺の横をすり抜け、降りしきる桜吹雪の中を彼女は駆け去って行った。


彼女が友人に駆け寄り笑っているのをぼんやり眺めながら、今ほどの彼女の言葉を反芻する。


――― プレイボーイって…なんなんだよ。


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