【長編】FOUR SEASONS
そんな優華の肩を抱き、まだ雪を触りたがる右京を無理やり抱えあげると、かつて俺が入院していた病院の中へと一歩足を踏み入れた。

途端に蘇ってくるあの日の記憶の欠片。

あの事感じた様々な思いや苦い記憶が胸を過ぎっていく。


優華も同じ事を感じていたらしい。


「孝宏がここに血だらけで運ばれた時は、心が凍りつく思いだったわ。
ここに来る度に、今、孝宏が生きていてくれる事を感謝せずにいられないの。」

「そうだな。あれは自業自得だったんだと思う。
たった一度とはいえ愛情も無い女を抱いた事への報いだったんだよ。
今はそれが解るけど、あの頃は本当に何も考えていなかったよな。」

俺の言葉に優華は足を止め、ギュッと腰に抱きついてきた。

そっと細い肩に手を添え引き寄せる。


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