【長編】FOUR SEASONS
職員室は話しにくいだろうと先生は俺を進路指導室へと連れて行った。

背中まで届く長い銀色の髪を一つにまとめ、紫色の瞳をした、どう見ても日本人にも先生にも見えない担任について西日の射す長い廊下を歩く。
進路指導室のドアを開けると、西日が当たって赤茶けた資料が所々に点在していて、紙が日に焼けた乾いた匂いがした。

先生は折りたたみの椅子を二つ持ち出し、テーブルの上の資料を隅に寄せてスペースを作ると、二人分のお茶を出してくれた。

紫の瞳で真っ直ぐに俺を見詰めてくる。

嘘を許さない静かな・・・澄んだ瞳だった。


この先生は俺と真っ直ぐに向き合ってくれる。


本能的にそう思った。


「落ち着いたら話そう。まずは自分の気持ちを整理しないか?」


すぐに色々聞かれると思っていた俺は驚いた。


何となく心が解れて…

自分の事

優華への気持ち

湧き上がってくる怒り

溢れ出す気持ちを吐き出すように語った。


いつの間にか、この担任に不思議なほどの信頼感を覚えていたようだ。


正直こんな風に自分の中の何かを誰かに話したことは今まで無かった。

心が弱くなっていたのか
それとも先生の月を思わせる、静寂ともいえる雰囲気が俺の心を解いたのか…


気がついたら自分でも驚くほど素直な気持ちを話していた。






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