【長編】FOUR SEASONS
Summer 恋心
桜の季節にあった事件もひと月もすれば誰も噂をしなくなっていた。
髪が短くなった事がクラスで注目を集めて、イヤでも痛々しい目で見られたけれど、春が過ぎ雨の季節も終わりに近付いた7月の半ばになった今、あたしの髪も随分伸びて、耳が出ていたショートヘアも、ボブに近いくらいまでそろってきている。
怪我や体調の事も色々聞かれることもなくなり、やっと平穏な生活を取り戻したと思えるようになってきた。
それでも孝宏先輩の事は別みたい・・・。
相変わらず『付き合っているの?』と、聞かれることがある。
その度にとても複雑な気持ちになって『違うよ』と笑って否定しながらも、心の奥がチクンと痛むのを感じてしまう自分いる。
あたし・・・・・・まさかね?
時々思うことがある。
あたし、孝宏先輩を好きになってきてるのかなって。
麻里亜は先輩はあたしを好きなんだって言う。
あの時放送であたしを好きだって言っていたって。
でも、記憶に無いんだよね。
先輩の叫ぶでも怒鳴るでもない、低い怒りを帯びた声が校舎に響き渡ったのは覚えている。
だけど、何を言っていたのかまでは覚えていない。
あのときの記憶は凄く曖昧で霞がかかったようにぼんやりしている。
「あのときの先輩の声、凄く迫力があって怖かった。好きでもない娘のためにあんなことできるわけ無いじゃない。先輩の気持ちは絶対に本気だよ」
あの後麻里亜はそう言っていた。
ううん、そんなこと無いよ。
だって、先輩はもてるもん。
あたしには良くわからないけれど、佐知子先輩もそうだった様に、体だけの付き合いの女の人がいるらしいと言うことも噂から聞いている。
あたしは、そういうのはイヤだ。
たったひとり、あたしだけを見て好きになってくれる人でないとダメなの。
確かに先輩は優しいし、あたしを心配してくれている。
でも、好きになったらきっと苦しい恋になるってわかっている。
だから・・・先輩を好きにはなりたくない。
髪が短くなった事がクラスで注目を集めて、イヤでも痛々しい目で見られたけれど、春が過ぎ雨の季節も終わりに近付いた7月の半ばになった今、あたしの髪も随分伸びて、耳が出ていたショートヘアも、ボブに近いくらいまでそろってきている。
怪我や体調の事も色々聞かれることもなくなり、やっと平穏な生活を取り戻したと思えるようになってきた。
それでも孝宏先輩の事は別みたい・・・。
相変わらず『付き合っているの?』と、聞かれることがある。
その度にとても複雑な気持ちになって『違うよ』と笑って否定しながらも、心の奥がチクンと痛むのを感じてしまう自分いる。
あたし・・・・・・まさかね?
時々思うことがある。
あたし、孝宏先輩を好きになってきてるのかなって。
麻里亜は先輩はあたしを好きなんだって言う。
あの時放送であたしを好きだって言っていたって。
でも、記憶に無いんだよね。
先輩の叫ぶでも怒鳴るでもない、低い怒りを帯びた声が校舎に響き渡ったのは覚えている。
だけど、何を言っていたのかまでは覚えていない。
あのときの記憶は凄く曖昧で霞がかかったようにぼんやりしている。
「あのときの先輩の声、凄く迫力があって怖かった。好きでもない娘のためにあんなことできるわけ無いじゃない。先輩の気持ちは絶対に本気だよ」
あの後麻里亜はそう言っていた。
ううん、そんなこと無いよ。
だって、先輩はもてるもん。
あたしには良くわからないけれど、佐知子先輩もそうだった様に、体だけの付き合いの女の人がいるらしいと言うことも噂から聞いている。
あたしは、そういうのはイヤだ。
たったひとり、あたしだけを見て好きになってくれる人でないとダメなの。
確かに先輩は優しいし、あたしを心配してくれている。
でも、好きになったらきっと苦しい恋になるってわかっている。
だから・・・先輩を好きにはなりたくない。