【長編】FOUR SEASONS
「俺さ、幼なじみがいたんだ。幼稚園の頃、親同士が仲良かった事もあって、良く一緒に遊んだんだ。
その娘がバレンタインの時にチョコをくれてさ…俺凄く嬉しかったんだけれど、恥ずかしくてお礼も言えなかったんだ」

優華の瞳を探る様に見つめて話を続ける。

「その娘のこと凄く好きだったんだ。
ホワイトデーにお返しも用意していたんだぜ。
でも、結局俺の両親が離婚して挨拶も出来ず、お返しも渡せずに引っ越したんだ」


優華の瞳が揺らいだ。

俺の事……わかる?

いや、わからないほうがいい

今はまだ…

「だから、その娘がいつかどこかで俺に気付いてくれたら良いな…って思って、カメラに向かっていた。今までは…」

「今までは?」

「そう、今はその娘に気付いて欲しいというよりも、好きになって欲しいって気持ちが強いね。やっと再会できたのに、その娘は俺の事なんて忘れてしまっていて、全然思い出そうとしないんだ」

そう、初恋の思い出なんてもういい。

今、優華が俺を見てくれている。


この時間があれば。


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