【長編】FOUR SEASONS

そろそろ、花火が始まる頃だろうか。

それまで緩やかだった人の流れがやや速くなり、同じ方向を目指し歩き始めた。

ヤバイな…。

人の流れから外れないように優華の肩を抱こうとした。



その時、不意に割り込んできた男が優華にぶつかり、一瞬よろけて繋いだ手が離れた。

あっという間に人の波に呑まれ引き離される。

優華はすぐに俺の元に来ようとしたが、人の流れに呑まれて華奢な体は反対の方向に弾かれてしまった。

「優華っ！危ない、俺から離れるな」

優華の伸ばす手を取ろうとした時、嫌なものが視界に入った。


俺より先に優華の手を取り引き寄せた奴が、薄笑いを浮かべて優華の腰を抱いた。

一瞬何が起こったのか解らなかった。

そいつが電車の中で優華を見ていたグループの中の一人だったと気づいた瞬間、俺の中で何かが切れた。