【長編】FOUR SEASONS
花火の間も帰り道も、ずっと優華の肩を抱き寄せていた。

優華も先ほどのことが怖かったのか、それとも俺と同じ気持ちでいてくれているのか、肩を抱かれる事を拒まないでいた。

花火の光に浮き上がる優華は、とても儚げで…綺麗で…

肩を抱いていないと消えてしまいそうな錯覚さえ覚えて、思わず抱きしめる手に力が入ってしまう。

こんなにも一人の女を愛しいと感じている自分がなんだかおかしかった。

誰かを愛しいと思って護りたいなんて昔の俺だったら考えられなかった事だろう。

さっきの男たちも俺に気付いて顔色を変えて逃げたけれど、あの頃の俺って本当に荒れていたんだよなあ。

だから、今夜の優華の瞳に映る穏やかな自分を見てマジで驚いた。

俺、いつの間にあんな表情を出来るようになったんだろう。

ナイフの切っ先みたいに殺気立っていた昔の俺を知っている奴は、今の俺なんて信じないだろうな。

隣で肩を抱かれ花火を見上げる優華の横顔を見つめながら、静かに心が満たされていくのを感じる。

この幸せな時間がいつまでも続いて欲しい。


そう願わずにはいられなかった。





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