【長編】FOUR SEASONS
孝宏先輩と成り行きとはいえキス…してしまった。

あたしにとってはファーストキスだったのに何の抵抗もなく自然に唇を寄せていた。

あたし、どうしちゃったんだろう。

ドキドキしたけれど、決して嫌じゃなかった。
ううん、むしろ嬉しかった。
2度目のキスの時、先輩は何か小さく呟いていた。
周りが騒がしくてよく聞こえなかったけれど、『優華好きだよ』って言われた気がした。

…気のせいだよね?

心のどこかでそう言って欲しいと思っているから、聞こえた気がしただけなんだよね?

先輩にとってはこんなキス位挨拶みたいなものなんだと思う。

きっと、私みたいにドキドキしたり、浮かれたりしないんだろうな。

ずっと肩を抱いてくれている先輩は、とても優しい笑顔で私を見つめてくれる。

彼は本当に優しい表情をするようになった。

よく笑うようになったし、冗談を言ったり、おどけて見せたり…。

一部の心を許した人にしか見せない表情を沢山見せてくれるようになったと思う。

責任感だけでなく少しは気持ちを許してくれているのだと思いたい。

先輩の好きな人を想う気持ちのほんの少しでいいから、私を想ってくれたらいいと思う。

彼が最近明るくなって変わったのは、確実にその女性のおかげなのだろうから…。

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