秘密の涙.
相変わらずその人の目からは
涙が流れていて、とても綺麗
な泣き顔だった。
まるで何かの絵画のような。
神聖な雪の降る今日に、ぴったりだった。


でも……なんかおかしい…。
まるで感情がないような表情。
涙も…こんな風に流すもの?


「んっ…?何?」


私の視線に気づいたのか、
その人は首を傾げた。
さらさらで少し長い、クリーム色の髪が
一緒に流れる。



やっやばい。見つめてしまった。

一気に顔が赤くなり、
どぎまぎして視線を下に移した。



…そのとき、視界にその人の細い左腕が
入って、また食い入るように見つめて
しまった。



腕に……青く痛々しいあざが
いくつもある。
素早く左腕にも視線を移すと、
左腕には何かで切ったような傷が
ミミズばれのようになっていた。


それをみた瞬間、なぜか心が
ざわついた。
普通に怪我しただけかもしれないけど…
何だろうこの感じ。
……………気になる。
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