シュガースパイスな君

「……ねぇ琥珀…?」

大地はものすごく優しい声であたしを呼ぶ。

「……。」
俯いていた顔をあげて、大地の瞳を真っ直ぐに見る。

「なに泣いてんの。琥珀はさ、どうしたいの?」
「………。」

言いたいのに口が頑なにそれを拒む。

「……琥珀。大丈夫だから…。言ってごらん。な…?」

ポンポンとあたしの頭を撫でながら大地は囁くように言う。
そんな大地に安心したあたしの唇はそっと動き出す。

「……産み…たい…。…堕ろしたく…ない…よォ……。」

唇が開くと同時に、止まりかけた涙がまた溢れだす。

「…泣かないで、琥珀。……堕ろしたくないなんて言わないでよ。…大丈夫って言っただろう?」

コクコクと頷くことしかできないあたしを余所に大地は続ける。

「……おれが堕ろせとか言うと思ったのか?」

――ふるふるっ…

あたしは首を振るしかない。
もう言葉を発する気力が残ってなくて…

「おれの子じゃないとか言うと思ったの?」

――フルフルっ…

「おれの子じゃなかったら誰の子なんだよ…ははっ」
「産みたいんだろ?それなら産めばいい…。ちゃんとおれだって世話するし」
「だい、ち…」


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