シュガースパイスな君
“――ひどい怪我です。どうぞ私の家へ。手当てを致します。”
そう言っておれの手を取った琥珀の手は…雨が降っているのに…ひどく熱かった。
――月代家…
「これでよしっ!」
ニコリと笑う琥珀。
「…………。」
そんな琥珀の笑顔を見たおれは、ありがとうすら言えずにいたんだ。
「堅くならないで。大丈夫。安心して。」
「…ぁ…ありが…とう…。」
声が擦れた。
琥珀は笑って
「いいの。これくらい…。」
言った瞬間、グラッって琥珀は倒れかける。おれがこの腕で支えた琥珀の身体は、触れられた手と同じくらいに熱かった。それで気付いた。琥珀は熱があって、それなのに、ヤンキーを倒して、おれにこんなにまでよくしてくれて。
「…ぁ…あのっ…大丈夫…ですか…?……ってダメか…。」
「…珊(シャン)。」
「珊…?」
「…うちの使用人。……中国の読みなの。」
「…失礼します。……あなたは…。」
使用人は琥珀を抱えるおれを見て怪訝そうな顔をする。
「…あ…珠蕗大地です…もう大丈夫なんで帰ります…。」
「…珠蕗…とは、珠蕗財閥の4代目の方でいらっしゃいますか?」
「えぇ。」
おれが言うと琥珀をおれから取ろうとする。