椿戦記
 
「それでは、アショの人々は地下に神々が住んでいると考えているのでしょうか?」

李漢は微笑んだ。
この娘は本当に学ぶことが好きらしい。

「地下世界は神々の住む世界の入り口と考えるらしい。
ケイン=テテオの底を見たかい?
あそこにはたくさんの人骨が沈んでいるよ。そのどれもが死んだ家族の幸せと再生を願って、あの場所に葬られたんだろうなあ」

椿はああ、と納得したように頷いた。

「シュナもそういうことを言っていました。
地下道もそのためにつくられたんですね」

李漢は頷くと、もう寝なさいと椿を促した。
 椿に告げなかったが、李漢はあの地下道は、遥か昔に隠れ家の役割をしていたのではないかとも考えていた。
かつて、この地は戦場であったと思われる傷跡を、村のあちこちに見つけることができたからだ。

ぱちぱちと燃える炉の炎を、李漢は複雑な思いで見つめ続けていた。
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