オレンジ色の校舎





すると、瀬川くんの影が動き出した。お弁当を片付ける音、資料を閉じる音が聞こえる。



「せ…瀬川くん、あの…」



「あっ、ちゃんと涙拭くんだぞ。俺、永納から疑われそうだし」



「ちょ…瀬川く…」



あたしはタオルを取って瀬川くんを見た。瀬川くんはドアの入口に立っていた。



「浅井、進路頑張ろうな。あと、健真と永納を応援しような!」



ドアの閉まる音が、あたしの瀬川くんへの想いを打ち切るような合図に聞こえた。



「せ、がわくん…」



瀬川くんにとっては、あたしと別れたことは正解だった。



瀬川くんとあたしは一緒にいるべきじゃなかった。



「───…ううっ…」



わかってる。



わかってるけど、想い続けちゃうんだよ。瀬川くんが…好きなんだよ。



「……っく、ごめんね。本当にごめんね、瀬川くん」



誰もいない進路室で、瀬川くんのタオルに包まれながら、静かに涙を溢した。






< 193 / 574 >

この作品をシェア

pagetop