オレンジ色の校舎
「せ…瀬川くん。あの…」
「ん?」
あたしはポケットに入っている、この冬にはピッタリのモノを渡した。
「…カイロ?」
「は…はい。手…冷たいから使ってください」
渡すのに精一杯だったあたしは俯いてしまい、瀬川くんの表情を見れなかった。やっぱり…困ってるかな?
「ありがとうな、浅井」
だけどね、見ちゃうんだ。そんな優しい笑顔で言われたら…見ないわけにいかないんだ。
「でも浅井は?震えてるし、浅井こそ寒いんじゃね?」
「あ…これは、寒くてふ…震えてるんじゃなくてき…きききき…」
「き?」
あたしはゴクリ、と乾いた喉を潤して答えた。
「き…緊張してて。せ…瀬川くんと話すことに…」
こんなに長く会話をするなんて、本当に久々なんだ。だから…なんてゆうか…
「そうなんだ。…実は、俺も」
恥ずかしいってゆうか…ってえ?今…瀬川くん何て言った?