オレンジ色の校舎
麻衣とたっちーは微妙な距離感を開けて、威嚇し合いながら帰っている。なんだかんだで仲良しだ。
瀬川くんと楓ちゃんの後ろ姿が小さくなっていく。並んで歩ける楓ちゃんが羨ましい。
そしてあたしは…
「なんで勇気、出さなかったんだよ」
なぜか一馬くんと一緒にいる。たまたま同じ家路のせいもあるが…まさかこの状況で一馬くんだなんて。
「し、仕方ないの。あ…あたしにだっていろいろあるんだからっ」
「そんなグダグダ言う元気があるなら、あたしも一緒に帰るって言えばよかったのに。そんなに見つめないでさ」
「……い、言えるわけないよっ」
元気もなければ勇気も、ない。
それに、あたしは瀬川くんと楓ちゃんの後ろ姿を眺めていたいわけじゃない。
あたしだって、瀬川くんに気持ちを伝えたい。
普通の片想いなら…伝えられるのに。