オレンジ色の校舎
ったく娘の気持ちも考えてよ、と心の中で吐き捨てた言葉を抱えながら、言われるがままに従った。
「こうやって遥に浴衣を着せたの何年ぶりかしら?」
「結構久しぶりだよね!」
「まぁ浴衣にチャレンジするってことは、好きな人がいるってことよねっ?」
あら、違うの?と鏡越しにあたしを見るお母さん。あたしは目を泳がせた。
「遥…」
「ん?何?」
「来年の夏は、ちゃんと帰ってきなさいよ。お母さん…寂しいんだからね」
逸らしていた目を鏡に戻し、あたしと目を合わさないお母さんを見た。
そうだ。あたしは受験が上手くいけば…来年はこの家には居ない。お母さんとこんな風に話すこともなくなるね。
「あ…当たり前だよ」
寂しそうに笑うお母さんを見て、ちょっぴり切なくなって視界が滲んだ。
大丈夫だよ、あたしはちゃんと帰ってくるからね。だからその日まで…よろしくね。