オレンジ色の校舎
「ケータイ出してくんね?」
「…??どうして?」
「メアド、聞いていい?」
「えっ!?」
正直、びっくりした。聞かれるなんて思ってなかったから。
「俺、浅井のメアドだけ知らないんだよ。中学の卒業式ん時、タイミング悪かったし」
「あ…そ、そだね」
あの時は別れたばっかりで、あたしは瀬川くんの姿すら見ることを避けていた。
泣きそうだったんだ。卒業式だからじゃなくて、瀬川くんの姿を見ることで…泣きそうだったの。
瀬川くんにおずおずとケータイを手渡した。『赤外線でいい?』と慣れた手つきで赤外線をする瀬川くん。
「はい、俺のも登録しといた」
情報交換が終わったケータイは、あたしの元へ返ってきた。あたしは軽く頭を下げた。
あたしのケータイに瀬川くんのメアドが登録されたんだ。少しニヤけてしまった。