オレンジ色の校舎
「……浅井は、俺が女装とか嫌じゃない?」
「むしろ楽しみー。だって、瀬川くんの女装見たことないもん」
「あれ?中学の時したじゃん」
「実は中学の時は見れなくて。係の仕事で裏方の方にいたから、見逃しちゃった」
中学の体育祭、瀬川くんの女装姿が見たくて、交代するように必死に頼み込んだけど…無理だった。
クラスのみんなは、瀬川くんの女装は可愛かった!って盛り上がってた。
「じゃ、今回は浅井に見てもらわなきゃな」
「うん。麻衣と見る!」
「でも…期待しない方がいいからな。ちょっとだけ見てくれれば」
夕日のオレンジのせいじゃない。瀬川くんが少し照れながら歩く足を早めた。
「いーや、ずっと見てるよっ」
そう言って、瀬川くんの歩調に合わせて隣を歩く。
「み…見るな」
「み…見るもん」
「見るな」
「見るっ」
歩くスピードを早めながら言い合うあたし達。散歩をしている老夫婦が不思議そうに見ていた。