オレンジ色の校舎





「それに須田ちゃんが言った通りS大は経済面な負担も…な。K短の方が断然安い」



「うん」



「親父が今も苦労してる姿を知ってる。だから俺は…S大は諦めて就職の手も考えた。だけど…」




──────…『就職をするには早すぎる。一馬のやりたいことはまだ山ほどあるだろ?金の心配はいらないから、な?』




いつの間にか校庭にまで辿り着いていた。靴が砂をかすめる。風はあたし達の頬をかすめる。



「周りの奴等が夢に向かっている姿を見たら羨ましかった。俺もS大行けないかな…って」



「行けるよ!」



あたしは一馬くんの手を取って握りしめた。



「一馬くんがS大に行きたいことを真剣にお父さんに話したら、必ず行ける!」



「保証は?」



「……ない」



「何だそれ」





< 329 / 574 >

この作品をシェア

pagetop