オレンジ色の校舎
「ま、麻衣っ」
楓ちゃんとの会話が終わったあたしはそそくさと麻衣の元へ。
「たっちー…わざとだ」
「え?」
「楓に女子にアイス配らせてるのわざとだよ。だっていつもなら…自分でみんなに配るはずだから」
その理由は、麻衣の目を見ただけで理解してしまった。
「あたしと…話したくないから、なんだよね」
楓ちゃんから渡されたアイスをギュッと握りしめて、寂しげにたっちーを見つめている麻衣。
たっちーはこの視線に気づかないで、男子に愛を込めたアイスを配っている。
きっとたっちーは必死なんだ。自分を保つために必死に笑顔でいるんだ。
でもいつもの笑顔じゃない。固くてぎこちない笑顔だった。その笑顔に気づいたのは、
あたし、麻衣、瀬川くん、一馬くん、楓ちゃんだけだった。