オレンジ色の校舎
それからもあたしは、ずっと麻衣の視線だけを気にしていた。
じわじわ溶けるアイスのように、麻衣とたっちーの気持ちもじわじわと何か蝕まれている。
何もしてあげられない自分が悔しい。2人の心を覗けて、修復できたらいいのにな。
「……アイス、食べなきゃ」
ふと、アイスの存在を思い出したように麻衣が言った。包装されたアイスは、袋の隅に少し溶けた跡があった。
アイスから伝わる冷たさが麻衣の心までも凍らせないかと心配しながら、一口二口とアイスを口にした。
「……冷たい」
アイスのことなのか、たっちーのことなのか、それとも麻衣自身のことなのかはわからない。
今日のことは麻衣自身も予想していなかった。イキナリのキスで昔の記憶が蘇ったんだ。
あたしももし、麻衣と同じ立場だったらどうしていたんだろう?
解くことが出来ない謎を抱えたまま、アイスを口に運び続けたあたしだった。