オレンジ色の校舎
「ねぇ、せ…瀬川くん月見て!」
『え?なんで月?……ってまさか浅井…』
「え、へへへ…」
瀬川くんは慌てて電話を切り、外に出てきた。
「浅井バカだろっ?こんな時間に外にいたら風邪引くっての!」
「大丈夫だよ。そんなに寒くないから」
そう、あたしは瀬川くん家に来ていたのだ。瀬川くんも来てくれたんだからあたしもって思って。
詳しい場所は知らなかったから、前もってたっちーに聞いていたんだ。
「冷えてる!…だから電話越しの応援もか弱い声だったのかっ?」
「あはは、バレちゃってた?」
「バカ。早く帰るぞっ」
ガシッと腕を掴まれて、あたしを家路へと連れていく瀬川くん。
「絶っ対、風邪引かないようにしろよ?」
「わかってるよっ」
「ちゃんと防寒対策も…」
「まだ真冬じゃないから大丈夫」
歩いている時も瀬川くんは受験のことなんか忘れて、あたしの体調の心配ばかり。