オレンジ色の校舎
───────2月14日。
「ま、麻衣…本当に渡すの?」
「何言ってんの。渡すよ」
今日はバレンタインデー。周りには、チョコを渡すのにドキドキする女のコと、身だしなみを異様にチェックする男のコ。
いつものクラスメートなのに、いつものクラスメートじゃない。
「あ…朝っぱらから、みんなち…違うね」
「そりゃー男も女も決戦の日だもん。それより遥、いつ渡す?」
「ま、まままだ決まってないっ」
『昨日のチョコ作りの時に決めときなって言ったじゃん』と、自分の髪を触りながら麻衣が言った。
そう、昨日あたしは(強制的に)麻衣とチョコ作りをした。その時にいつ渡すか決めておくように言われたのだ。
「麻衣、やっぱり渡すの辞め…」
「あのぉ」
麻衣に声を掛けようとした時、あたしの言葉は誰かの言葉で遮られた。