オレンジ色の校舎
ふと、自分の鞄に入っている渡せなかったチョコを思い出した。もう…自分で食べようかな?
…いや、やっぱり渡したいかも。例え直接じゃなくても。
あたしは鞄からチョコを取り出した。震えている手を必死に落ち着かせる。
そして、キョロキョロと辺りに人がいないか確認してから、エナメルの上にそっとチョコを置いた。
「……あたしの名前書いてないし大丈夫だよね?」
『瀬川くんへ』としか書かなかった。…あたしからってバレたくないもん。
あたしは一呼吸すると、バッとその場を離れた。そして大急ぎで家へ帰ったのだった。
────────次の日。
「本っ当に見てねーか?」
「だーかーらー、見てないって。何度も言わせるなよ」
「じゃあ誰がくれたんだろう?」
瀬川くんとたっちーの会話を聞いてビクビクしているのはあたし、浅井遥。
瀬川くんが話している内容はもちろん、昨日あたしが瀬川くんのエナメルに置いたチョコのこと。