オレンジ色の校舎
「誰がくれたんだろーね、瀬川くんにチョコ」
ニヤニヤしながらあたしを見る麻衣。そんな顔しないでよっ。
「言っちゃえばいいじゃん。渡したのはあたしって」
「むむ無理っ。練習風景まで覗き見しちゃったし言えないっ」
「でも瀬川くんは誰から貰ったか気にするよ?」
わかってるけど…バレたくない。
「でも、『瀬川』って俺の名前が書いてあるから、俺が貰っていいんだよな?」
瀬川くん達の会話に遠くからコクコク頷くあたし。
「まー、なんなら俺が貰ってもいいけど?」
たっちーがウインクをしながら言った。えぇっ!?あれは瀬川くんへのチョコなんだからっ。
「バーカ。誰が健真に渡すかよ。俺のだっつの」
「ちぇっ。朱希のケチー」
同時に安堵の息を吐くあたし。なんだか朝から疲れちゃってるよ、自分。
「…にしても、チョコくれたの誰なんだろう。誰だかわかんないから、お礼も言えないや」
ポツリと呟いた瀬川くんの言葉に少し、胸が痛んだ。…ごめんね、瀬川くん。