オレンジ色の校舎





「うん。遥ちゃん、前にあたし飲み物を買いに行ったことがあったじゃん?」



「あぁ…あった!」



「その時にある人から、浮かない顔してどうした?って言われてちょっと相談したの。そしたら『曖昧な気持ちはダメだぞ。一度きりの人生なんだから、何度も想いをぶつけてぶつかれ』って言われたんだ」



「楓、何の相談したの?」



「秘密ーっ。だけど芯がある言葉で心が動かされちゃった。シゲさんって人らしいよ」



「…それって茂山元気じゃね?」



すると瀬川くんが反応した。瀬川くん知ってるのかな?



「数年前、甲子園をかけた予選の決勝で、ぶっ倒れたってメディアで騒がれてた人だと思う」



「あー!すごい有力なキャッチャーだったらしいよなっ」



「それに、シゲさんの愛称で呼ばれてたんじゃなかったか?」



一馬くんとたっちーも知ってるみたい。高校野球に疎いあたし達女子は何もわからなかった。



病院を出ても、シゲさんという人の言葉が頭から離れない。曖昧は…ダメ。






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