オレンジ色の校舎
「トシさん、よかったね」
「あぁ」
「会社の人も賑やかだったね」
「あぁ」
「………」
あたしの得意分野の沈黙になってしまった。同じ歩調で歩くけど…妙に緊張する。
「んな緊張すんなよ。どうせ恋愛事情だろ?何でも言えよ。まぁ、一度フラれてるけど…」
「あたし…一馬くんの彼女になりたい」
曖昧は、もう終わり。あたしは次に進むんだ。
「……は?」
「待たせちゃってごめんね」
「……いや、理解出来ねぇんだけど?お前は朱希が…」
「瀬川くんのことはもう好きじゃないから。それに…あたしは一馬くんの傍にいたいの」
嘘じゃない。今日の一馬くんを見て、傍で支えたいと一層強く思った。
「まだ一馬くんの気持ちが変わっていなかったら…彼女になりたいです」
「……撤回とかナシだからな?」
「しないよ。だって…」
ぎゅっ
「夢じゃねーよな?」
一馬くんの腕の中はとても心地よくて、目頭が熱くなった。本当だよなって何度も呟く一馬くんが可愛くて、抱きしめ返した。