オレンジ色の校舎
麻衣が鼻を高くしているのを横目に、瀬川くんを見た。
瀬川くんはさっきみたいに話しかけてくれるけど、あたしからは話しかけられない。
中3の時も高2になった今も、あたしは上手く話せない。
続かない会話。傍にいても息が詰まるような空気。耐えられるわけがない。
きっと、瀬川くんは幻滅しちゃったに違いない。想像していたあたしじゃなくて呆れたはず。
でも…あたしは上手く話せなかっただけ。好きな人を前にするとすぐ俯いちゃうんだ。
だから、こうやって遠くから見つめてるのがあたしには合ってるんだ。
「遥、瀬川くんばっかり見つめてないの。授業始まるよ?」
麻衣の声で我に返ったあたしは、『大きな声で言わないでよ』と麻衣を半分睨んで自分の席へ。
ラッキーなことにあたしの席から斜め右の前が瀬川くん。だから、授業中はいつも見つめることができる。