オレンジ色の校舎





いつものように教科書を開き、教科書を見ているフリをして瀬川くんを見つめていると…



「………さん…浅井さんっ」



急に隣の席の男子から声をかけられた。男子は…なんだか焦っている様子。


教科書を忘れたのかな?あたしは『どうしたの?』と尋ねると、



「教科書、違うよ!今数学なのに英語開いてるって」



慌てて自分の教科書を見ると、男子が言った通り、あたしの教科書は数学ではなく英語だった。



「浅井。そーんなに数学をしたくないか?」



タイミング良く教科担が現れた。途端に教室に笑いが溢れた。



あたしは赤面しながらすみませんと肩をしぼませ、おずおずと数学の教科書を取り出した。



ひーん、恥ずかしいよ!あたしは教科書で顔を隠した。そして少しだけ前方を見ると、瀬川くんが笑っているのが見えた。



それからの授業は覚えていない。教科書を間違えた恥ずかしさと、瀬川くんへのドキドキを隠すのに精一杯だった。






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