Door
「…ごめん。」

私はそっと怜治さんのほうに向きなおって言った。
正直なところ、本気になるのが怖いんだ。


『まだ出会って間もないからだよね。
これから知っていくっていうのは?』

流れる沈黙。
でももう答えは決まっている。


「…本当にごめんなさい。」

そのあとなんでって言われたけど
理由を答える気持ちにもなれないまま
観覧車は地上に到着した。


それからなんだか気まずくなって
別れ際私は言った。

「ありがとう、さよなら。」

少し寂しくなったけど、今日は楽しいデートだったって気持ちで納得させて
これ以上進む前に先に別れを告げた。


―彼には悪いことしちゃったな。
でも、これでよかったんだよね。

さよなら。

久しぶりに使う、私自身を前に進めるための言葉。
でも、本当に前に進んでいるのか、最近よくわからない。
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