あたしの部屋 *短編
この男は"加藤悠"
この"居場所"の提供者であり
私を管理している人。
唯一の本名を知ってる人。
『ちゃんと約束守ってんだな』
「当たり前でしょ、」
『"マスター"ね』
「あんたが名前をふせろっていうからマスターなんて呼ばれてるんじゃない」
『まあいいんだろ?居場所さえあれば』
そう居場所をくれる代わりに
私は名前もなにもかも
こいつに取られた
「えぇ」
私の"初めての経験"も。
『なんか苦労してねぇか』
なんでこの人は
私をきにかけるんだろう…
なんでこの人は
私に優しくしてくれるのか
暇潰し程度なのかもしれない
「ないわ」
『ハハッさすが意地っ張りも絶好調ってとこだな
なんかあったらすぐ連絡しろ』
(パタン)
あの人はすぐに帰った
てっきり"する"んだと
思ってたから拍子抜けだ
なんてことをあたしは
思ってるんだろうか。