あたしの部屋 *短編
そう、
他の店ではありえないだろうが
ここにはベッドがある。
あたしがここに
住んでいるからだ、
家も仕事もここが唯一の居場所
ここだけは捨てられない。
『マスターありがとね!
ほんとかわいいかわいいっ』
またもや"サクラ"は
自分をかわいいと連呼して
満足そうに鏡を見ている。
「良かった。じゃあコレ」
『はーい!これ代金ね!
お釣いらないからまた今度
ご飯がてらに相談聞いてね!』
「…ああ、考えとくよ…」
美容院でお釣いらないとは
どうなんだ、と思うが
これはあたしの生活費なので
ありがたく受け取っておく。
"サクラ"を店内で見送り
彼氏との幸福を願っておく
「ふぅ、"ユウト"」
『あー決まらね』
「じゃあ黒にす『じゃあこいつよりちょっと明るめ』」
なんでだろうか。
あたしは黒がすきなのに。
"ユウト"は黒を嫌がる。
ホストだと金にしたがるのか?
金なんてまぶしいじゃんか。