たばこの匂いとあなた

「じゃあ先生また明日。」


支度を終えた華月は東堂に声をかけ手を振った。


「あぁ。気をつけて帰れよ?」

「うん!」


華月と響は帰っていった。



一人になった東堂は机に座り、一番上の引き出しから一枚の写真を取り出した。


そこには大学時代の東堂と隼人が楽しそうに笑っていた。


東堂は写真の中の隼人を見つめてつぶやいた。



「『俺の…

俺の家に来ないか…。』


俺は華月になんてことを言おうとしてたんだ…


隼人すまない。


いつの間にかお前の大切な娘に惚れてたよ…」


そしてまた写真を引き出しにしまった。


「でも、もう俺がいなくても華月は大丈夫だな…」



東堂の寂しそうな声が静かな保健室に響いた。



< 106 / 128 >

この作品をシェア

pagetop